池波正太郎氏の書生として務められた佐藤師の文章は内容も表現も格調高く、食べ物のエッセーとは思えないぐらい気高いものである。そして師の食べ物に対する愛着とその知識の深さにいつも感心する。食べ物と酒についての読み物としては最高の作品であると言える。なぜ終わってしまったのであろうと色々考えてみた。でも考えても何も変わるまいと思うと余計に悔しくなってきた。この作品のよいところは、食べ物の歴史を語り、そしてその食べ物を大切に守っている人が紹介されるところだ。要するに、人間の手で守られている「食べ物」だけでなく、守っている「人間」にもスポットを当てて、人の歴史をも語り、読み物としての広がりをもたせているのだ。なんて、素人の私が解説するのは失礼な話である。小生は読者としてこの作品が大好きで、この連載が終わってしまうのが悲しいのである。
最後の話を一文字も残さず読んだ。終わりにあたって筆者である師のお言葉はなかったが、最後の文章に師の言いたい事を私なりに感じ取った。
最後のくだりは、紹介されている宿屋の女将が、夕食と酒を愉しんでいる師に自家製の米で作ってくれた「おにぎり」の話である。作って頂いたおにぎりを夜食として、自分でいれたお茶と一緒に食べるというシーンで、最後に、「これ以上の口福は生涯もうないだろう。」と語っている。要するに日本人にとっては、自然に取れたお米を使い、炊き立てのご飯で、情を込めて握られるおにぎりが一番おいしいのだ。米作りに携わった人、美味しく炊いて、情を込めて握ってくれた人へ感謝の思いを感じながら、一番シンプルながら美味しい「おにぎり」が最高の口福なんだ、とおっしゃっている様に感じた。私の人生においても「おにぎり」は色々な場面でその思い出を感じさせてくれる。人生の色々なシーンに「おにぎり」は登場する。多分、皆様もそうではなかろうか。売られている具沢山の「おにぎり」よりも、愛する人が握る塩と海苔の「おにぎり」が、小生にも皆さんにも一番の口福であり幸福であろう。その思いを再確認しようじゃないですか? それを食べる事ができる事を。
佐藤隆介さんの作品の終了が体調等の問題でない事を望む。できれば是非、一献お付き合い頂きたいです。そして又この「がんこの裏側」を再び読む事ができる事を心より望んでやまない。
感動をありがとうございました。
山村幸広
追伸:佐藤隆介氏の作品で「翼の王国」で掲載されたこの「がんこの卓上」を本にした、「日本口福紀行 がんこの卓上」という本がNHK出版からでておりますので御紹介させて頂きます。
【関連ページ】
