その講演の中で彼は、「世界で最初にOne to One marketingが生まれたのは約200年前の日本です。」と言った。それは、「Toyama no Kusuriuri!」。「富山の薬売り」と言った。ご存知だろうが、「富山の薬売り」は薬箱を各家庭に置いて行く。そして1年後にまたやってきて使った薬を補充して、補充した薬の代金を頂く商売である。これが元祖であるそうだ。そして次に生まれたのは100年以上たった米国で、ピザハットであると言った。それはピザのトッピングを個人が自由に組み合わせて注文できるというサービスであった。そしてリーバイスは各ウエストサイズに1インチ刻みの長さをそろえて200種類以上の個人にあわせたサイズを用意した。このように個人にあわせた商品を展開するのがOne to One marketingなのである。
これらを考えると全て、顧客のためであり、顧客の側に立ったサービスである。昔の有名ホテルには各個人のデータが揃っていて、「山村はチーズと牛乳が嫌いである。」といった情報を管理していた。お客様の為になる様にサービスするのがOne to One marketingであるが、最近はちょっと違う。
最近のOne to One marketingは競争激化の為、アグレッシブになっている。一つの会社や商店が色々な他分野へ進出する。よって競争に勝つためのマーケティングになっている。ようは客本位と言いつつ客の事を考えていない、「おしつけマーケティング」がよく見られる傾向にある。これを見直さないで、One to One marketingという唱え文句にだまされると客を失なっていく。
あるサイトでクラシックミュージックのCDを買う。そして次の日にそのサイトにいくと、クラシックミュージックばかり勧められる。メールにも「こんないいクラッシクミュージックCDがあります。」と勧めてくる。えーーい、もう1枚買ったからいらないんだよ。ほっといてちょうだいな。そのうち電車に乗る際に、定期券を自動改札機にいれた瞬間、「山村様、モーツアルトのCDはいかがでしょうか?」という音声が流れてきそうだ。小生が何時何分に電車に乗ったかまで、管理されるかもしれない。例えば、朝乗れば、「モーニングコーヒーはいかがですか?」という広告が聞こえてきそうである。我々はOne to One marketingにモニタリングされてしまうのである。
もう押し売りはヤメテ。押し売りはやめよう。ITは素晴らしい。ITは武器である。しかし武器は間違うと凶器になってしまう。
もう一度、顧客側にたったOne to One marketingを展開しようではないか? 顧客の為になるように、使ってみよう。小生が飛行機の中で欲しいものは、名前で呼ばれる事ではなく、2枚のブランケット、歯ブラシ、デイリースポーツ、テイッシュペーパーと冷たい麦茶である。小生の座席にこれが置いてあれば、どんなに素晴らしい満足感であろうか?
One to One marketingという呪文をふりほどいて顧客の為に考えよう。我々も。
山村幸広
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