料理だけではない。こちらのパン。地下にパン屋があるが、パンだけをわざわざ買い求める方が多いほど素晴らしいパンである。小生はフレンチではパンをあまり食べないが、ここだけは特別である。それほどパンが旨い。こちらのパン屋の「ケシの実のパン」は小生の好物である。このパン屋もなくなってしまう。そしてデザートはなんといっても特製チョコレートケーキ。高級チョコレートが流行っているが、こちらのチョコレートはかなり旨い。多数あるデザートであるが、このチョコレートケーキを食べずにタイユバンを語るなかれである。
ロブション氏はこのレストランを通じて日本食を知り学んだ。「すきやばし次郎」で鮨を食べて、魚の美味しい食べ方(出し方)を学び、六本木ヒルズの新しい店などはそのノウハウが生かされているらしい。その基点はこのタイユバンロブションである。
そしてなんと悲しいことにこちらのワインカーブもなくなるそうである。現在、東京のソムリエやフレンチ料理店はこちらのワインがフランスへ持ち帰られるのか、売り尽くしバーゲンに出されるか注目しているそうである。よく時間がある時にこちらのカーブを眺めたもんだ。そして大切なお客様へのプレゼントはこちらのワイン。タイユバンの木箱にワインを入れるだけでワインの格が数段あがるほど信用のある木箱であった。又こちらの店員さんに色々と教えてもらった。こちらのカーブの品揃えは日本最高級クラスと言って間違いないであろう。こちらほど愉しめるワインカーブは日本で見たことがない。カーブの入り口に飾られている、有名人が飲んだワインの瓶とラベルは眺めているだけで楽しい。時代を感じる事ができるし、何より「何を誰と食べたんだろう?」という想像を愉しめる。こんな素敵なカーブもなくなるなんて。
普通は店が閉まると悲しみは1回であるが、ワインカーブと愛用のパン屋もなくなるのでダブルパンチ、いやトリプルパンチである。悔しいなあ。
幸い建物は残るようである。それは救いだ。もしガーデンプレイスにあの西洋館がなければ、なんだか絵にならない。というかガーデンプレイスの良い所は無機質なビルだけでなく、この洋館と共に溢れる開放感。そして写真美術館とするどいタイトルをもってくる映画館。こんな支えがあって人が集まるのである。そのコンビネーションの素晴らしさと優雅な雰囲気がガーデンプレイスの特徴であり、他にない美しさである。気品と風格が他と違う。
当分このビルから移る気がしない。
山村幸広
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