「大井町にいい中華があるから行かないか?」ととある社長に誘われた。ちょっと疑ったが、かなりの自信の様だったので、喜んでご一緒させて頂いた。
大井町の駅の近くの商店街。外から見るその店は、所謂、町の中華料理屋さん。ふらっと入って、「チャーハンと餃子」と頼む様なお店である。店内も決して綺麗ではない。カウンター席が12席ほどで中の厨房に、大将(60歳ぐらいであろうか)と奥様と息子さんがてきぱきと働いている。これが完全予約制で、しかも一人当たり20000円以上もするようなお店とはまだ信じられないのである。
座ってビールを注文すると、すぐに10種類ほど盛り合わせた冷菜が出て来る。一つ、一つとても美味しい。そして5分も経たないうちに、蒸し鶏、野菜の炒めたものが4種類出て来る。野菜の炒め具合も味付けも確かに美味しい。
その後は大正海老、上海蟹と続く。上海蟹はもちろん蒸したものを頂くが、奥さんが甲羅の部分に白いご飯を入れてまぜてくれる。即席、上海蟹の卵ごはんを頂くがこれが旨い!!そして別に上海蟹の甘酢炒め。贅沢な一品である。大将は、素材を言いながら、その素材の何通りかの料理方法を客に説明をして、客の好み通りに仕上げていく。
その後、牛肉の炒め、なまこ、ヘチマと料理が続く。そして五島列島で取れた大きな「ハタ」を出してきて、「これを蒸すと旨いよ!!」と言いながら料理をはじめる。生姜、葱、香菜をたっぷりかけて食べるこのハタの蒸し物は絶品である。魚の仕入れが素晴らしい。お腹いっぱいであるがその後も牡蛎が出て、最後にトマトと黒酢のラーメンでシメである。
イヤーーーー食べ過ぎである。しかし旨いから食べられるのだ。食後のデザートは、「杏仁豆腐かマンゴプリン」と聞かれて思わず「両方!!」と言ってしまった。
デザートも自家製、一切手抜き無し。旨い。全ての美味しい店の共通点は「手間を掛ける」事である。
4人で一体、何品食べたであろうか? 紹興酒も大きな瓶が3本、空になっていた。大将の性格が良い。もちろん腕も良い。早いし丁寧。プロ中のプロである。ヘチマの合わせについていた、揚げ豆腐。豆腐を丁寧に揚げていく。プロの仕事である。その揚げ豆腐の美味しさは表現が難しい。絶品としか言い様が無い。
「これたべるか?」と聞かれると思わず、「食べる!!」と言ってしまう。人柄が素晴らしい。「ここは厨房がお客さんから丸見えだから、変な事は一切出来ないし、冷凍なんかも使えない。大変なんだよ。」と、自信たっぷりに語っていた。
いやーーー、世の中広いもんですわ。恐れ入りました。
大井町「萬来園」、中華、恐るべし。
山村幸広
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