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山村幸広の一日、一グラム

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新橋 京味 「和食の最高峰」 12月16日
 こういうお店がいかに貴重であろうか。もし京味を知らなければと思うと恐ろしい。この店の美味しさをどう表現すればよいのだろうか? 小生の出身地である京都は京料理が看板であるが、では京都に京味さんほど美味しいお店があるであろうか? ほとんどないのではないか? 東京にありながら京都を越えた京料理、それが京味である。料理は奇をてらったものは一つもない。すべてにシンプルであるが、考えつくされた調理方法、そして味である。すべてが手のこんだ、京都風にいえば、「きちっとした」仕事。完璧である。料理のでてくるタイミングも完璧である。皆がすべて計算の上で次の料理の準備をする。「和食の最高峰は?」と聞かれれば間違いなく京味と答える。和食は「京味」、鮨は「神泉 小笹」、肉は「かわむら」、河豚は「味満ん」といった具合に王道の店には共通したものがある。それはなにか? 一番の素材を手に入れて、その素材を大切に確実に細かい仕事をほどこす。それを毎年、毎日、当たり前のように繰り返し提供する。京味でまずいものが絶対に、一品でも出てこない、という安心感が客を包む。客を包む包容力が店の強さである。京味にお連れした客が満足をしないはずがない。これも店の強さである。

 この日も、このわたの乗った小さなご飯から始まる。空腹感が落ち着く。そして八寸。あわびが旨い。そして城崎は津居山の山本の蟹。香箱蟹の内子と外子と綺麗にそがれた足が小さな頭の中に入っている。まるで蟹の宝石箱。そしてずわいの足が2本そえられたパーフェクトな演出。足の甘み。ジューシィな味わい。みずみずしさ。脱帽である。これ以上の蟹があるであろうか? そして河豚の白子を焼いて頂く。続いてえび芋。揚げ方がなんとも言えない。これはなかなかできません。刺身は鯛と伊勢海老と中トロ。鯛はカワハギの肝あえで頂く。そして伊勢海老はのりで巻いて頂く。これは東京人向けの大切な演出。多分、東京の人は白身や海老が淡白すぎるのだ。それをこの工夫で最高の刺身に仕上げる。そしてかぶの煮たもの。ご主人いわく、「外も中も、同じ味で同じ柔らかさに仕上がっているはずです」。そしてすっぽん小鍋を頂き、最後にはお待ちかねの「鮭のはらすごはん」。ますのすけ(鮭の最高峰)のはらすをたっぷりのせたごはん。皮が別に焼かれて、それを刻んで混ぜる。このアクセントがたまらない。鮭は、魚の中で一番皮が旨い魚である。これを食べなければならない。このご飯はどの料亭のシメより旨い。そして甘いものは有名な「葛きり」。大将自ら、目の前で作られるこの「葛きり」は芸術的。説明によると、少し固めと柔らか目を混ぜて出すそうである。そしてみつが甘過ぎず最高。これも長年の経験で極めた甘さ。大将いわく、「40年前に東京に出てきた時に、銀座の千挽屋に行った。すると見たことのないおいしそうなフルーツが一杯ならんでいた。フルーツでは勝てない。なにか違うデザートが必要だ」。そこで苦心されて出来上がったのが、この「葛きり」である。最後のはらすご飯、そして葛きり。どんなにお腹が一杯でもこの最後の、黄金のシメの二品を食べずして帰れないのである。旨すぎでやんす。

 大将の言葉が印象的であった。「料理人に好かれないと美味しいものが食べられない、とか言う人がいるが大間違い。料理人であれば、いつ時も誰にでも最高の美味しいものを出そうとするのが料理人。客で差別するなんてありえまへん。美味しいものを食べて、また来てもらう。これが何よりの喜び。もしそうでなかったら、それは料理人とは言えない」。

 このお店、この料理人はまさに人間国宝ではないだろうか? 料理人の人間国宝がいて何も不思議ではない。

 これほどの口福を人に与えているのだから。

山村幸広

【関連リンク】
  • エキサイト検索 >“葛きり”
  • エキサイト検索 >“人間国宝”
  • by yamamura2004 | 2005-12-16 17:16
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