以前から先達の一人である、コロンビアミュージックの廣瀬さんに、「シングルモルトを教えて欲しいでやんす。」とお願いしていた所、お連れ頂いた。廣瀬さんのワイン、音楽に対する見聞の広さは、お付合いすればするほど理解する事ができる。見聞がある人は決して自分から見聞を披露しない、廣瀬さんはそんな素敵な先達である。
廣瀬さんが小生を連れていったBARは銀座である。名料理店の「むろい」さんの地下に、ひっそりとそのBARがある。銀座で半世紀以上にわたってBARを開いていたマスターは酒の、洋酒の生き字引のような人。そしてその長年にわたり、365日、店を閉めたことがないというのがマスターのポリシーである。素晴らしいの一言に尽きる。
10杯程度であろうか、マッキャランの12年に始まり、ラフロイグやオールドパーといった具合に次々と注がれる酒。というか次々にグラスを空にする廣瀬さん。本当にとんでもないオヤジである。小生も酒は強いほうであるがはっきり言って、一回り以上、年が上のこの先達には負ける。マスターはしっかりとした語り口調で、全ての酒を正確に説明してくれる。バランタインまでいったあたりで約1時間ほどたっていたであろうか? 一通りの教えを得る事ができた。はっきり言って、よっぱらってきた。きている。しかし廣瀬先達はケロっとしている。「おいしいよ、このチョコレート。」とか、言っている。そして、「そうだ、山村くん、ここのマティーニを一杯、飲んで行きなさい。」 えーーーーー。まだ飲むンスカ? と心で言いながら、先達に逆らうことはできない。「頂きます!(オエーーー。)、(アチキはマティーニは好きではないざんす。)」と思いながら。そして出てきたマティーニを一口、口を濡らす。
「旨いーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!。」
はっきりいって旨い。そうか判った。今まで旨いマティーニを飲んだことがなかったのだ。こんな、見ていれば、単純な飲み物なのに、作る人でこれだけ変わるとは。赤坂のムーンシャイナーのサイドカーといい、バーテンダーの渾身の傑作は決定的に味が違うのである。カーネルのマティーニは間違いなく、日本一のマティーニである。
先日お邪魔したときのフルーツカクテルも半端ではなかった。コニャックベースにフルーツを絞り、その上にシャンパンを引く。素晴らしい。イヤーーー、プロです。世の中にはまだまだ、恐ろしい店が沢山有りますなあ。判ったような顔をしていてはダメです。
貴重なBARがレパートリーに加わった。ここでは気取らずに、正直に、美味しいものを飲ましてもらおう。すると全てが広がる。新しい味の世界へ。
人生の美味しい店、美味しい酒、飯の追求はまだまだ続く。
山村幸広
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