さてこの店をイタリアン料理屋と呼んでいいのであろうか? 小生の場合、イタリアンレストランでは、高級店よりもカジュアルなお店の方が好きであり、シンプルなイタリアンの方が好きだ。又、アンティパストとパスタが好きなのでメインも食べたくない。しっかりメインまで食べるのであればフレンチへ行く。それにイタリアンワインの知識が無い為、ワインを選ぶ楽しさも無い。要するにイタリアンを食べる場合は、淡島通り沿いの「ドマーニ」のようにカジュアルなイタリアン料理屋で、テーブルワインを大勢でわいわいやるのがベストと考えている。それに「ドマーニ」クラスの店をしっていれば1人3000~4000円で十分満足に、しかも美味しいイタリアンが食べられるのである。又パスタ好きな故、本当はパスタばかり3、4品頼んで食べたいという欲求をもっていても勇気がなくてそれができないので、どうしても満足感に欠けてしまう。イタリアンの高級店も何軒も回ったが「ドマーニ」の満足感を超える事はできなかった。
しかしこのASOだけは違う。ジャパニーズヨーロピアンキュイジンヌとも言うべきか。フュージョンなんて決して言わないで頂きたいし、西洋料理とも言えない。日本人にあった最高級のヨーロピアンなのである。素材は季節感を感じさせながらも常に限定されている。(野菜も肉も常に同じ仕入れで安定感がある。)そして5品ほどのコースは全ての皿に手抜きがない。そして一品一品の説明も盛り付けのプレゼンテーションも、素敵で洗練されていていやみがない。ドルティエの後の、セロハンの串に刺して出されるお菓子も楽しい。「エスプレッソをもう1杯」と言いたくなる。余談ではあるがイタリアンの食後はエスプレッソが良い。よく勘違いされている方が多いが、普通のコーヒーとエスプレッソを比べれば、コーヒーの方がカフェインが多い。要するに深炒り豆の方が、カフェインが少ないのである。よって夜の寝る前にはエスプレッソが良い。
ある日こちらでランチを頂いた時に、あまりの二日酔いと風邪で食べる気がしなかった事があった。スープを頂いた後、「今日はもうこれで結構です。すいませんが体調がすぐれず」と申しあげると「ではグリーンサラダでもお持ちしましょう」と言って頂いた。本当はサラダも食べたくなかったが、同席の相手にも申し訳ないし、メニューにもないのにせっかく作って頂けるという事なのでお願いした。このサラダの美味しかった事。バルサミコベースのそのドレッシングは、バルサミコが目立たないくらいに抑えてあり日本人にぴったり。そしてそのグリーンサラダの中には数え切れないほどの種類の野菜や半熟玉子、カリカリベーコンなどが詰まっていて、「グリーンサラダと一言で呼ばないで」という感じである。体調不良はどこへいったといわんばかりに全部食べてしまった。「こんなおいしい創作サラダは初めて頂きました」と申しあげたところ、「いつでもどうぞ」と言われたのでそれからは小生の前菜はこの一品になった。大体、このサラダとパスタ、メインという感じで頂いている。小生は少々偏屈者で、そしてポリシーとしてアラカルトで頂いているが(フレンチでもそうであるがアラカルトで注文する事にしている。)皆様には何種類かあるコースをお薦めする。満足感タップリのお値打ちコースである。そして絶対、絶対に試して頂きたいのがASO特製トマトジュースである。食前酒の代わりにどうぞ。北海道産らしいそのトマトのジュースは、今までのトマトジュースは何だったのかと唸る一品である。ちょっと筆舌しがたい美味しさである。お店で売っていて持ち帰りができるそうであるがちょっと小生には買えないお値段であるので買った事はない。
一杯頂く愉しみを残してある。
山村幸広
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