佐藤隆介師の名作、『池波正太郎の食卓』の表紙に池波氏がなにやら、お好み焼きのような物を作っている写真がある。ビールを片手にエプロンをして非常にリラックスされているように見えるが、真剣な眼差しでソースを注がれている。この姿がとても美しく、そして食べ物への愛着がとてもよく伝わる素晴らしい写真である。
この本を読み進めていると、池波正太郎氏が作っていたものがわかった。それはお好み焼きではなく、もんじゃ焼きでもなく、「どんどん焼き」というそうである。想像すると、粉が非常に少なく野菜や具がたくさんあるお好み焼きといった感じである。しかし小生はこれを見た事がない。もしこの「どんどん焼き」をご存知の方は是非、教えて頂きたい。
そしてその写真を見ていると、どうしてもお好み焼きを作って食べたくなってきた。美味しいお好み焼きは「やきやき 三輪」で食べられるのだが、なんとなく自分の作るお好み焼きが食べたくなった。これは、美味しいカレー屋のカレーも美味しいが、やっぱり家のカレーが美味しいというようなもんである。
お好み焼きとは、基本的には簡単に作れる食べ物である。よって創意工夫が必要ともいえる。小生は京都出身なので、家庭でよくお好み焼きをした記憶はない。大阪では各家庭に、蛸焼き機があるぐらいであるから、お好み焼きは当たり前のように家で作る。小生がお好み焼きを美味しく焼けるのは大阪の人々の教えに従うものである。はっきり言うが、かなり旨い。
本邦初公開、山村流最強お好み焼きレシピを公開する。
:だし(昆布、鰹)
:小麦粉
:キャベツ
:天かす
:紅しょうが
:青ねぎ
:豚ばら
:山芋
:花かつお
:あおのり
:おたふくソース
:マヨネーズ
:卵
まず重要なポイントであるが、ダシを冷やす。ダシが暖かいと粉がなじみにくい。粉を一掴みしてボウルに入れる。徐々にダシを入れて溶いていく。かなり水分がないくらいにして、粉の半分ぐらいの量のすりおろした山芋を入れていく。そしてキャベツであるが、できるだけ細かく切って、できるだけ多く入れる。そして、卵、紅しょうが、天かす、青ねぎをボウルに入れてかき混ぜる。キャベツが多くて粉が少ないのが山村流である。そして家庭のホームプレートを250度に設定して、豚バラ肉を炒める。(塩を少々)少し焦げ目がつくくらいに炒めた後、ボウルの中に焼けた豚バラ肉を入れてまたかき混ぜる。そして豚バラ肉が焼けて出た油の上に、ボウルをあける。そして蓋をして少し焦げ目がつくくらいにじっくり焼く。重要なポイントその2、決して上からぎゅうぎゅうおさえつけてはいけない。ケーキの様にふわっと焼き上げる。もちろん片手にビールである。両面を焼き上げて、プレートを「保温」モードにする。そしておたふくソースをかける。たっぷりと、こぼれたソースが鉄板の上で音をあげて喜ぶ。そして香りが部屋一杯に広がる。そしてその上にあおのりをかけ、花かつおをたっぷりかける。お好み焼きを各人の小皿に出してお好みで。
焼きあがったお好み焼きを8片にきって小皿に乗せる。よく小皿なんかつかわずにコテで食べるのが通だというが、そんな事は気にしなくて良い。それはもんじゃ焼きのコテを裏返しにしながら取って食べるというのと同じようなもんであろうが。そして再び、ビールをコップに注ぎ、「乾杯—————!!」「旨い!!!!!!」「熱、あちーー、美味しい!」
安い材料で美味しい食べ物を作るのが、大阪流。大阪の代表選手であるが、各家庭でも気軽に作れて食べられるのが素晴らしい。
ビールも鉄板もすぐに綺麗に空。そして満腹。「ご馳走様。」
山村幸広
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